山口クリニック ニキビ外来 [皮膚科]

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よくある質問

イソトレチノイン(アキュテイン)治療についての質問

Q8. 胎児の奇形性について教えてください

日本の新生児奇形の統計では、出生1,000人当たり口蓋裂1.28、口唇裂1.27、無脳児1.06、全体を合わせると新生児奇形は概略6〜7(1,000分娩当たり)です。ダウン症の発生率は分娩10,000当たり約5人で、20年間でやや増加しています。

原因としては、20%〜30%は染色体、遺伝子異常で、母体側要因としては、感染、薬剤の影響がありますが、原因不明のものが半数以上です。催奇形作用のある外因としては、母体の疾患、特にウイルス感染(風疹、AIDS)や糖尿病、物理的要因として放射線被爆、薬剤としては様々な薬剤が原因となりますが、多いものに抗生物質、抗癌剤、サリドマイド、ビタミンA過剰摂取やビタミンA誘導体(イソトレチノイン、エトレチナート等)があります。

イソトレチノインの重大な副作用の一つに、妊娠した女性に投与した場合、流産や胎児の催奇形性という副作用があります。具体的な報告として、中枢神経系の奇形、耳の欠損や奇形、目の異常、心奇形、口蓋裂、胸腺や副甲状腺の奇形があります。女性の場合、服用前には必ず妊娠反応検査(できれば服用開始1ヶ月前の検査がより確実です。)を行い、毎月の定期診察時にも必ず妊娠反応の検査を行います。服用中はもちろんですが、服用中止後の6ヶ月間は必ず避妊を行っていただきます。また、男性が服用する場合は、男性側も服用中と中止後の1ヶ月間は避妊をしていただいています。規定の期間きちんと避妊を守っていただければ、通常妊娠と比較して胎児の奇形率が上昇することはありません。

従来当院では、女性はイソトレチノイン服用中と中止後2年間の避妊を指示していました。それは以下の理由によります。私は2003年からイソトレチノイン治療を開始しており、本格的な処方は2005年から開始しています。国内で最も古くから、最も多くの症例を経験している医師の一人であると自負していますが、私が治療を開始した当時、日本でこの治療を行っている病院はほとんどありませんでした。そのため、情報はほとんどなく、先行しているアメリカの情報を調べ(アメリカでは1982年にロシュ社がアキュテインを発売)、懇意にして頂いていたアメリカの医師からも情報を得ながら、日本での治療を開始しました。そのような状況であったので、かなり慎重に安全性のマージンを大きく取って治療を行ってきました。アメリカで治療が先行していたとはいえ、欧米とアジアの人種の違いもありますし、添付文書上の1ヶ月の期間で本当に良いのだろうかという疑問も私の中にありました。

しかし症例数も多くなり、治療の実績も世界中で増えてくる中で、あまりに長く安全性のマージンを取って女性の妊娠する機会を奪ってしまうことは、本末転倒の結果になり得ることから(とはいえ、過去に受診している患者さんへも添付文書上は1ヶ月であり、安全性のマージンをかなり大きく取っていることは説明していましたが)、今後は「6ヶ月」(なお安全性のマージンを取っていますが)という期間に改めさせていただきます。

イソトレチノインの類似薬であるエトレチナート(商品名チガソン)の半減期は約120日であり、ビタミンAの半減期は約200日程度です。これらの薬剤の蓄積性は非常に高いのですが、イソトレチノインの半減期は約20時間と比較的速やかに血中から消失します。一部脂肪と結合する可能性はありますが、海外を含めて1ヶ月以上避妊を守った場合に奇形率が上昇するというデータはありません。

なお、当院で治療を受けた患者さまからは、胎児の奇形の報告は1例もありません。上記のことでご心配なことがありましたら、診察の際にご遠慮なく医師までご相談下さい。

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